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東大生が行く世界一周おっぱい人の旅
世界一周の旅人になった僕。僕には物欲は無い!!と言い張っていたが、歯ブラシが無いとき、歯ブラシが欲しい!!という感情は果たして物欲というものなのか。未知との遭遇に戸惑い、泣き、笑い、そしてオナニー


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気円斬ひとくん

Author:気円斬ひとくん
僕にとって人生はゲームだ。
長い長い「ときめきメモリアル」だ。
僕は、このゲームに正面からぶつかって、とことん楽しみたいと思う。



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インド  ゴアより  大切なものを失いました。
インドに来て、一ヶ月経ち、自分が大切なものを失くしていることに気づいた。
インドのどこの駅にもある大げさな機械の上に乗った時に気づいた。
その機械は、人が一人乗れるようになっていて、目の高さの位置にわけのわからない内部構造が豪華な電飾で照らされていた。そいつは一ルピーを要求していたのでそっと入れてみると、その複雑な内部構造からは想像できないほど情けない紙切れを一枚吐き出した。
見ると、表には映画俳優か僕の顔なのかの判別すらつかないほどの煩雑さで人間の顔が刷られており、裏には62と書かれていた。
この構造で、この紙切れ一枚。
そうか、これは、あれだったのか。
インドに来る前は72だったはずだ。
僕は、たった一ヶ月で10も減ったのか!?
きっと連日の極暑と下痢が原因だ。なんてことだ。
僕は慌てて自分の服をめくった。

ない!!

すっかりなくなってしまった!!

僕のお腹の肉が!!

僕のアイデンティティーが!!

どうしよう。どうすればいいんだ。
僕は、、
肉体的な防御力とともに、急なネタ振りに対する防御力も失ってしまった。。。
もう僕のお腹は素敵な音色を奏でてくれない。
情けない乾いた音をだすだけだ。

ぺちっ

「必殺腹踊り」を失った僕はあんまりにも無力と認めざるを得ない。
どうしよう。
どうしよう。
今はまだいい。しかし、日本に帰ったら。そして、周りのやつに面白いことをしてくれょ~、と執拗に要求されたら。。。
僕はどうすればいいんだ。
ネタが必要だ。
新たなネタが必要だ。
いますぐだ。うう、、、だめだ。
だれがネダをぐれぇぇ~~

悪いほうにばかり考えるのはよくない。いいほうに考えよう。

よし!!
これで海でナンパするとき、海水の中にお腹を隠して女の子に近づきつつ声をかけなきゃならないというもの寂しい思いをすることはなくなったぞ!!
もう、海からでるときお腹に精一杯力を入れてひっこめておく必要がなくなったぞ!!
よっしゃー!!

だけど、やっぱり、僕は自分のお腹が奏でていたあの音が恋しい。

ぽんっ

という透き通った音色が。

どうやってだしていたのかもう思い出すこともできなくなってしまった。

インド  カジュラホーより  お金と友情と信頼と
3.jpg

CIMG2098.jpg

手前がビル。奥がババ。


僕の”所有物”の中で、最も大切なものは何かと聞かれたら、
それはやっぱり「金」だ。
僕のもっているわずかばかりの「金」だ。
僕には、睡眠欲と排泄欲に次ぐ強烈な欲求として、なんというか、行動欲というようなものがある。
いろんなところへ行きたい。自分のやりたいことをしたい。
それを十分に満たすためには、絶望的に「金」が必要だ。
「金」がないと行動することすら満足にできない世の中だ。
単純な例だが、大切な友人に飲みに誘われた時、「金」が無いからというただそれだけの理由で、狭い部屋にこもり、擦り切れるほどやり尽くしたテレビゲームをこねくりまわしてやり過ごさなければならない事態ほど、僕にとってのハルマゲドンは無い。
しかしこのような選択を余儀なくされている人間は確実にいる。しかも決して少数ではない。
多くの学生の抱える罪悪のひとつが、「時間はあるけど金が無い」ということだ。
もし金が無ければ、なんとかして手にいれなければならない。
その時は大抵、労働という手段を選ぶことになる。
自分の「時間」を「金」に換えるということだ。
自分の人生を必要な「金」の分だけ捨てるということだ。
自分の人生がその分だけ短くなるということだ。
自分の貴重な時間をたった数枚の札のために捨てなければならないのか?
恐ろしいことだ。とんでもないことだ。ぜんっっっぜん割りにあわねぇよ!!!
どっかの先生が言ってたけど、
「学生のうちは親に借金してでも遊んだほうがいい。くだらないバイトなんかで時間を潰してたら、ほんとに人生もったいないぞ。」
社会人になれば、みんなすぐに「金はあるけど時間が無い」になっちゃうのだ。
さぁ、みんな今すぐに親から借金をしよう!!
さぁ、みんな今すぐに奨学金を申請して遊びに使いまくろう!!
僕は運良く、当面の行動欲を十分に満たしてくれるだけの「金」を手に入れた。
僕はその「金」をとても大切に使うし、間違ったつかい方をするのは大嫌いだ。
「金は天下の回りモノ」なんて言葉は絶対に信じない。
僕は、極めて慎重に「金」を使う。
自分の人生を守るために。

ようするに、僕はただ単純に自分がケチだということが言いたかったのだ。


遅延続きで永遠に到着しないのではないかと思えるような地獄列車と、肩幅の半分もないスペースに無限に閉じ込められるかと思われた地獄バスの終着点はカジュラホという村だった。
そんな思いをしてまでここまで来たのは、ひとえにsexを見るためだというのだから自分に笑えてしまう。
カジュラホは、官能的で精緻なsexの彫刻に彩られた寺院郡が観光客を世界中から集めている有名な村だ。
確かにそこは村だった。
貴重な寺院がぽつぽつと点在しているだけで、周りには高い建物は一切無く、家もまばら、人もまばら、ほこりっぽい土と緑に囲まれたのどかな場所だった。
宿を確保すると、すぐに友達ができた。
ビルというインド人の若者だ。
彼は日本人女性を妻にもっていて、日本とインドを行き来した生活を送っているらしい。確かに、今までのインド人とは違ってなんとなく国際的なもののしゃべり方をする男だった。恰幅のよい体つきをしていて、シモネタを言ってはヒャヒャヒャとよく笑ったが、その高い声と笑顔はとてもセクシーだった。彼の奥さんもその笑顔にやられたのかもしれない。
ビルは僕を村の沐浴場のほとりにある宝石店に案内してくれた。
そこはビルの友人の溜まり場だった。
ババという店主が経営しているようだったが、ほとんど営業らしきものはしておらず、一日ダラダラとみんなで笑って過ごしているようだった。一生懸命働いている人なんてインドでは少数派だ。
僕はババともすぐに親しくなった。
ババは細くて、少し老けていて僕のおじいちゃんに似ているからか、とても31歳には見えなかった。よくしゃべりぶっきらぼうだが、優しい男だった。
僕は彼らの仲間に自然と入れてもらうようになり、毎日遊ぶようになった。
カジュラホは小さな村なので、村を歩けば必ず彼らと出くわし、呼び止められるのだ。
今までのインド人に対する記憶が心に植え付けられていたので、完全に警戒心を捨てることができたわけではなかったが、それでも彼らとふざけて遊んでいる時間はとても穏やかで、平和で、楽しかった。
あるときはババとビルと僕で3人でバイクにまたがって村中を走り回った。
あるときは、車をチャーターして少し離れた洞窟まで遊びに行ったりした。
彼らはいつもとてもユーモラスだったし、僕との時間を純粋に楽しんでくれているようだった。次第に僕も警戒心は無用のものとして忘れていった。
彼らも僕に言ってくれた。
「今まではインドの中でも一番悪い地域にいたのだ。お前はインドに来たのだから、ホントのインドを知らなければならない。俺たちがホントのインドというものと、ホントのインド人というものを教えてやるよ。この村では、お前は何も心配することはない。ただ楽しめばいいさ。」
「お前は、金のことばかり気にしてるが、金がなんなんだ。何の価値があるんだ。俺たちにとっては重要じゃない。俺たちにとって重要なのは友情と信頼さ。それを大切にしていれば金は後からついてくるさ。」
僕は、やっとここでホントのインド人に巡り逢えたような気がした。
僕を、金としてじゃなく、人としてみてくれるインド人に巡り逢えた気がした。

この村はとても居心地がよかった。
でも、そうは言っても、いつまでもここに留まっているわけにはいかない。僕の旅には続きがある。
僕は彼らに、出発すると告げなければならなかった。
出発の前日、いつもの宝石店で、僕は彼らにこの村を出ることを告げた。
「今お前は俺たちのことを何パーセント信じてる?
 お前は今、ハッピーか?」
ババは、僕と一緒にいるとき何度もこう聞いてきて、僕の気持ちを心配してくれた。
最後の日も、彼は同じことを僕に尋ねた。
「お前は今、俺たちのことが信じれてるか?ハッピーか?」
僕が言うべき言葉は決まっていた。それを僕はためらわずに口にだした。
「100パーセントだよ。僕は今ハッピーだ。君たちに会えてハッピーだよ。」

ババは言った。
「そうか、実は今、金に困っているんだ。200ドル今すぐ欲しいんだ。俺たちのことを信じているなら金を貸してくれないか?
すぐに返すよ。10日後にはお前の口座にいれる。
俺たちはお前のことを信じてる。持って行きたかったらこの店の宝石をいくらでも先にもっていったっていい。あとで金を送ってくれることを信じてる。
お前も俺たちのことを信じてるんだろ?今俺たちは現金が必要なんだ。200ドル貸してくれないか?」
、、、?
、、、、、?
「?、、、、ババ、本気で言ってるの?」
「ああ、本気だ。金が必要なんだ。友情は信頼と助け合いだろ?困ったときは助け合うのが友情だろ?俺は今、困っているんだ。お前だってビルに助けられたじゃないか。さぁ、現金が無ければカードでもいい。
カードで今すぐ200ドル切ろう。」

、、、、カードが現金化されるのに何日かかるんだよ。ババ。10日後に返すって言ったじゃないか。。。。。

「本気でいってるの?」
「ああ、もちろん」
「本気で言ってるの?」
「本気だ?」
「ホントのホントに?」
「ああ。」

僕の顔に無表情に歪んだ笑みが浮かんだ。
「、、、もし、もし、もし、本気で言ってるんだったら、、、、
俺はお前のことを、、、絶対に!!、、信じられない。」

ぎぃーーーーっひっひっひぃひっひっ。しししししし
「本気な顔になっちゃって。冗談だよ。冗談。ひっひっひ
こーーんなに、本気な顔しちゃって、ビル見た?
ひーーーひっひっひっひっ」
ババは腹を抱えて笑い出した。

、、、、、
違う。こいつは、そんなんじゃない。
今のは、決して冗談なんかじゃない。
決してこの男の目は冗談ではなかった。
この男は、僕がカードを出していたら、ためらいなく200ドル切って返しただろう。
この男は、ただの商売人だ。結局頭の中は、、、「金」だ。
結局は「金」でできている。何が友情だ、何が信頼だ。笑わせるな。

しかし、僕はその瞬間にビルやババなど視界にすら入らないほどの恐怖に陥った。僕の思考は一気にグルグルと回転した。

友情、信頼、、、。
信頼のない友情が存在しえるだろうか。
僕には想像がつかない。
その二つは切っても切り離せないものだ。
それでは、信頼とは何なのだ?どうやって確かめられる?
僕にとって信頼とは、自分の最も大切なものをその人に預けられるかどうか、ということに等しい。
それは、物質的には、僕の宝物すなわち「金」をその人に預けられるかどうか、ということだ。
僕は、それができる友人こそ親友であると心の中で密かに決めている。
それは、果たしてその「金」が最終的には返ってこなくても、結局最後にはそいつを許してしまうであろう、というような類の信頼だ。そういう友人が日本には確かに存在する。
だからといって日本にいる僕の親友諸君は僕に借金をしようとは思わないでくれたまえ。できることなら、僕は自分の「金」を失いたくは無い。

それでは、僕は、この世界において、日本を飛び出したこの世界において、果たしてそこでできた新しい友人に、自分の「金」を託すことができるのであろうか。

僕は決定的に、絶望的に、終局的に、はっきりと理解した。
僕にとって、それは、とてつもなく困難なことだ。
それは、おそらく、、いや確実に、、、不可能だ!!
彼らに、僕の、大切な「金」を託すなんて、、、そんなことができるものか!!
ということは、すなわち、、この世界において信頼することができる人に、親友に出会うなんてことは、僕にとっては、絶対に不可能であるということだ。

僕は、徹底的に孤独であると気付いた。
この世界で、徹底的に一人であると気付いた。
それが、これほどの恐怖であるとは知らなかった。

なぜ、僕は知らず知らずのうちに、人を求めるようになっていたのだろう。


光を見つけた。
そうだ。僕にはただ一つ、例外がある。
中国のフェーフェン達だ。
彼らは、僕にとって、まぎれもない友人だ。
何故だろう、、
そうか、
卑しいことに、それは単純だ。
彼らは決して僕から金をとらなかった。ただそれだけのことだ。
もし、僕が、真の友人を求めるならば、
僕は、自分からは何も与えず、ただ相手から親切と善意を要求するようなずうずうしく傲慢な旅行者にしかなり得ない。
そんな自分を想像すると、さらに嫌悪感が上から圧し掛かってきて、僕は出口を求めようともがき、その甲斐も無く思考の海に深く深く飲み込まれていった。

僕は「金」によって自由を手にいれた。
しかし、同時に、今僕は「金」によってある種の自由を失っているようだ。
何かを変える必要があるのかもしれない。
でも、どこをどう変えればいいのだろう。。


次の日、出発の朝、ビルがバススタンドに見送りに来てくれた。

ババは、そこには現れなかった。

僕は、心底ほっとした。






インド バラナシより  インドの動物たち






僕は動物が好きで、地図をみるとまず始めに動物園を探してしまうような人なので、インドはそういうことではとても楽しい。
いろんな動物が街に一緒に暮らしている。

公園にいけば必ずと言っていいほど、たくさんのリスがピョンピョン飛び跳ねている。
逃げていくおしりが可愛らしい。
実家で飼っていたウサギを思い出す。
あいつはちゃんと散歩にだしてもらってるだろうか。

寺院の薄暗い通路では、映画のお決まりの演出のようにバサバサとコウモリが飛んでくる。
こっちに向かって飛び掛ってくるのはなかなかスリルがある。
しかし、じっと顔を見てみると、なんともクリッとしたビーズみたいな目をしている。
どうやらコウモリはねずみに羽がついたような生き物らしい。
悪いやつではなさそうだ。

部屋の中にはなぜかよく、大きなトカゲがいる。
たまにドサっと天井から降ってくる。顔にだけは落ちてこないでくれよと念を押して僕は眠る。
こんなところにいてもご飯はないだろうと心配になって窓からだしてやるのだが、次の日になるとまた部屋の中に戻ってきている。
そうか、どうやらここは彼の部屋で、僕の部屋ではないらしい。
勝手に入ってきて追い出したりして、タチの悪い訪問者ですみませんでした。

ブタはなぜかいつも、ゴミ捨て場の汚くて臭いところに気持ちよさそうに寝ている。
体は汚れ放題だ。
どっかの宗教が彼らを不浄のものとしたのも理解できる。
確かに彼らは不浄な生き物だ。

ヤギは親子で歩いている。
子供が親についてぴょこぴょこ歩き回るのはどの動物も一緒だなと心が和む。
おい、そんなもんハミハミ噛むなよ、プラスチックだろ。
体に悪いだろ。
ふとみると、別のヤギがガケの高くて狭いところによじ登っている。落ちたら確実に複雑骨折は免れない。
どうして、僕たちはわけもなく高いところに上りたがるのだろう。
メーメー鳴いて、怖いくせに。

ガンジス河を見ようとベランダにでると、隣の部屋からサルがでてきた。手にはメディカルボックスを持っている。
どうやら、隣人がでかけている隙に泥棒に入ったらしい。
しかし、僕がここで見ているというのに全く気にしないようだ。
なんという度胸の据わったやつだ。こいつめ。
隣人のためにもメディカルボックスをなんとか取り戻したいと思った。しかし、さすがに奴もバカではない。
ベランダの縁に座って、僕が一歩でも近づいたらこの箱は下に落として粉微塵だぞ、といわんばかりだ。
僕はあきらめてただぼうぜんとなりゆき見つめていた。
警察に電話してももう手遅れだろう。
タケシさん、ごめんなさい。
メディカルボックスをひとしきり手にして物色した後、サルはささっと壁を登って僕に一瞥をくれて去っていった。
メディカルボックスは、サルとともに消えてしまった。
きっとサルの体調管理に有意義に使われることだろう。

もちろん、牛は常に視界に入っているというほどにたくさんいる。
インドでは牛は神聖な動物だからね。
教科書で勉強したした。
おおきなおなかを堂々と揺らして道を歩いていく。
道に座り込んでいるのがいると、リクシャーの親父がけつを棒でひっぱたいてどかす。
どっかの家庭でよく見かけるような光景だ。
僕がその体に手を触れると、牛はその部分だけゾクゾクっと皮膚を波立たせる。それを見ると僕もゾクゾクっとする。
狭いみちを歩いていると、喧嘩している牛がいる。
角を突き合わせているが、ふむ、どうやらそれほど真剣ではないみたいだ。なら止めることもないな。
むこうのシルクの洋服店では、中に牛が入って、しっぽをパタパタと揺らして棚を眺めている。
彼女は今日は何か着るものでも買うつもりなのかな。

ムンバイからバスで30分ほどのところにあるサールナートという村に行ってきた。
そこは、ブッダが始めて説法をしたという聖地だ。
その説法を聞いたのはブッダと親しかった5人の修行僧と、森の鹿たちだったそうだ。
サールナートには、鹿公園というのがあって、フェンスで区切られた向こうに鹿がたくさんいた。
彼らはブッダの説法を聞いた鹿の子孫だろうか。だったら素敵だな。

隣のフェンスの向こうには、子供を抱いた動物がいる。
布を身にまとって、
「マニー、マニー」
と鳴きながら、フェンスの向こうからずっと僕を見つめ、僕の後をついてくる。
ふむ。
あれが人間という動物か。

インド  バラナシより  ポールは害虫です。





僕は何故かムキになって、
話しかけてくる奴の言われるがままに流され最後にそいつが手のひらを返してくると激しく口論をする、
ということを繰り返していた。
今思えば、僕はまだ信じたかったのだと思う。
その中に、一人でも僕を金としてじゃなく、人として見てくれる人を見つけたかったのだと思う。
その時の僕には、そんな自覚はなかった。
ただやみくもにインド人に飛び込んでいた。

夜7時、ガンジス河のガートでプジャー(礼拝)が行われていた。
男が数人川に向かって並び、大きな火を体の周りに回転させながら祈りを捧げていた。
たくさんの民衆がその後ろに座り、鐘を鳴らしたり手を合わせたりしながらともに祈っていた。
それは、幻想的な光景だった。
最後まで見届けて帰ろうとすると頭に籠をのせた少女が僕に近づいてきた。
「NO MONEY NO MONEY」
そう言って籠のなかの花を僕に渡そうとする。
それからの成り行きは想像できたが、僕は意地悪な気持ちになってその花を手にした。
少女が花に火をつけた。
これを家族の名前を言いながらガンジス河に流せば、僕の家族は幸せになれるらしい。
僕は言われるままにした。
河のうえに小さな光が漂っていくのは綺麗だった。
みると河にはいくつもの光が灯りゆらゆらと穏やかに揺れていた。

「お金ちょうだい。
じゃないとお母さんが怒るの。
お金ちょうだい。」

「NO MONEY っていっただろ?
お金は払わないよ。」

「じゃないと幸せになれないよ。」

「ああそうかい。
だったら俺は不幸せさ。
幸せがそんなに簡単に買えるかよ。」

僕は少女を置き去りにして立ち去ろうとした。
しかし少女はついてきた。

「お金ちょうだい。」

「あげないよ。NO MONEY って言っただろ?」

「お金ちょうだい」

「あげないよ。」

少女はどこまでもついてきた。

「お金ちょうだい。」

僕は殺意すらこもったかのような形相で振り返り、少女に対して言い放った。

「お前には絶対!!金は払わない!!」

少女は立ちすくんだ。
そしておびえた目をして僕を見つめ、言葉をこぼした。

「I am sorry 」

その言葉は強烈に僕の頭をぶったたいた。
音が消えて、視界がせまくなった。
熱いものが胸から昇ってきた。

「I am sorry 」

僕は何をしたんだ。
僕は何をしたんだ。
なんで、この子はこんなこと言わなきゃならないんだ。
「I am sorry 」なもんか、
僕にそんな言葉を受け取る資格はない。

この子には、何もないのだ。
選択肢が。
こうするしかないのだ。
こうやって生きていくしかないのだ。
それを誰が責められるだろう。
それを誰が咎められるのだ。
僕は、その少女の、何も頼るものもすがるものもない少女の、押し拉がれた小さな心をなぶり、踏み潰したのだ。
その子の心は、もうこれ以上ないほどに痛めつけられているだろう。
これ以上下がないほどに苛め抜かれているだろう。
そんな少女の心を、僕はさらに上から踏み潰したのだ。

僕は何をやっているのだ。
何をやっているのだ。

悪趣味な、下劣な、、、、最低だ。

僕はその場から逃げた。

どうすればいいのだ。
僕はどうすればいいのだ。

わかっていたのだ。はじめから。
原因はもっと大きなもので、どうしようもないものだということくらい。
あの子は無力だ。あわれなほどに無力だ。
だけど、僕も、その大きなものの前では変わらずに無力なのだ。
今の僕には何もすることはできない。
僕には何の力もない。


そして、僕には彼らのために何かをしようという意思もない。

しかし、僕はなぜあんなことをしていたのだろう。
あまりにも悪趣味なことだ。
僕は、僕も、僕だって、、変わりはしない。
ただの害虫じゃないか。
そこで黙っている無害な石以下だ。

僕にできることは、打ち捨てられたゴミのようにあの子を、彼らを見て見ぬふりすることだけだ。

何もできないなら、何もするつもりがないなら、せめて害にならないようにしよう。

それが僕のできるすべてだ。

それが僕だ。




インド  バラナシ  資本主義のゴミ処理場
インドは、すべてがありのままの姿でそこにあるようだ。
日本では覆いがかけられ、知らないふりをしていればそれでやり過ごすことのできた数々の極端な物事が、インドでは露骨に僕を悩ませる。
すべてきれいごとで済む日本が恋しくなる。
なにも見たくもないことを、わざわざつらい思いをして見ることはない。
覆いをかけてしまえばいいのだ。
そんなもの見なくたって平和に生きていくことができる世界が、他にはある。
幸福で美しいきれいごとの世界が。
ここは、そうした世界のしわが寄せ集まった、ゴミ処理場だ。


ガンジス河のほとりのこの町は、ヒンドゥー教の聖地としてあまりにも有名である。
河のほとりにはガートが隙間なく並び、沐浴をする敬虔な信者たちで毎日にぎわっている。
というイメージだが、実際は熱心に沐浴する人よりも、河ではしゃいで泳いでいる子供たちのほうが圧倒的に多い。

この町を10歩進めば、インド人が声をかけてくる。
(僕は、彼らを総じて呼ぶ呼称を「インド人」以外には知らないし、ひょっとすると他の町ではまた人間性が違うのかもしれないが、彼らが「インド人」というイメージを旅行者に対して強烈に印象づけていることは間違いないと思われるので、あえて「インド人」と呼ばせてもらう。)
「こんにちは。どこからきた? ジャパーニー? 両替する?
チョコ買う? ボート乗る? 火葬場行く? ちょっとちょっと見るだけ。そこ私の店ねー。」
インド人を人間として扱っていたら一日何もすることができなくなってしまう。まぁ、僕には特にこれといってするべきことなんてないのだが、それでも僕は忙しそうにして、彼らをそこらのゴミか害虫かのように払いのける。
歌舞伎町を歩く女の子にどこか似ている。
もっとも歌舞伎町を歩く女の子は、寄ってくる害虫ををどこかしら求めているところがあるからまだいいが。
インド人は、ほんとに僕にとってはうるさい害虫だ。
だからといって、1歩も歩かずにガートの隅に腰掛けて休むことはできない。
害虫のほうから10歩近寄ってきて、僕にたかってくるのだ。


インド人を害虫呼ばわりするのは度が過ぎている感があるが、そうせずにはいられないというような感情が僕の中に少なからずあった。
僕の心理状態を理解してもらうためにあらかじめ述べさせてほしい。
僕は、インド到着早々、インド人に400ドルをだまされて失っていた。
そのいきさつについてはあえて述べまい、僕の過剰な驕りと、無根拠な自信が招いた結果だ。いい経験になった。そう納得させようとしてはいるのだが、その出来事は僕の心に大きな傷をつけていた。


インド人その1。リクシャーワーラー
バラナシに着いて、まずは目当てのホテルに向かおうとリクシャーの親父に行き先を示す。
しかし、親切そうな親父が連れて行くのは自分の息のかかったホテルばかりで、いっこうに僕の宿に向かわない。
「そこに連れてけって言ってんだろ!!なんで連れてかねぇんだ!!
言うとおりにしやがれ!!」


インド人その2。火葬場の人
たまたま火葬場の近くに来た。もっとも話は聞いていたので興味はあったが。
すぐにインド人が寄ってくる。
「火葬場写真だめ。僕はガイドじゃないよ。そこのホスピスで働いてる。お金いらない。火葬場みてもダイジョブ。一緒に行こう」
僕の向かっている方角と同じなので、断る理由もなく歩き続ける。
火葬場に着くといつの間にか人が交替していて、おじいさんになっている。なにやら死体の焼き方について説明しているようだ。
すぐそこでは、死体が薪の上で火をつけられていた。
そしていくらもせずになにやら金の請求に話が移った。
「それじゃぁ、お前は何キロの木を寄付するのだ?」
「は?」
「ひとつの死体を燃やすのに何百キロもの木が必要だ。
木は1キロ160ルピーする。みなが寄付している。
それで、お前は何キロの木を寄付するのだ?」
「、、、、、0キロだよ。今はまだわからない。今寄付する気にはなれない。」
「何を言ってる。みな何キロも何十キロも寄付するのだ。さぁ、お前は何キロ寄付するのだ?1キロか?2キロか?何キロ寄付するのだ?」
「0キロって言ってんだろ!!
わけわかんねぇこと言いやがって。なんだかしらねぇが木が足りねぇんなら、燃やさずに河に沈めればいいじゃねぇか!!俺の知ったことか!!金金うるせぇんだよ!!」


インド人その3。マッサージ師
マッサージ師らしきインド人が声をかけてきた。
姿は普通の人と変わらないので一見それとはわからないが、なにやら10ルピーで頭、首、肩をマッサージしてくれるらしい。
「で、10ルピーで何分マッサージしてくれるんだ?」
「気にするな。お前が気持ちよくなるまでやってやるよ。」
「そうはいっても、何分マッサージしてくれんだい?」
「気にするなよ。お前が気持ちよくなるまでだ。」
そうか。それなら、まぁ気持ちよくしてもらおう。
マッサージ師は、頭、首、肩を軽く流し、体、腕、足、全身と念入りに揉み解してくれた。
手垢のべっとりついた手で。
それなりに気持ちよくて、満足したのでそろそろ終わりにしてもいいよと言った。
「お金は君の気持ちで払ってくれればいい。
外国人は何百ルピーかいつも払ってくれる。インド人でも100ルピーくらいだ。
君の気持ちで払ってくれ。でもだいたいみんな何百ルピーかだな。」
「は?さっき10ルピーって言ってたじゃない。」
「それは、頭、首、肩だ。」
「知ったことか、だったらちゃんと説明しろよ!!お前が勝手にやったんだろうが。」
30ルピーをぶしつけに渡し、僕は立ち去ろうとする。
「もう、50ルピーくれ。もう50ルピーだ。」
「それ以上は絶対に払わねぇ!!」


インド人その4。河の青年
バラナシに来たのだから、ガンジス河で沐浴しないわけにはいかない。
ステーキを注文して、周りの野菜しか食べないようなものだ。
ガートのほとりで服を脱ぎ、河に飛び込んだ。
見た目は緑色で汚らしいが、中に入ると気持ちよく、このクソ暑いインドの中で、そこは天国だった。
しかし、2分とたたずに僕は河からでなくてはならなくなった。
ふとガートを見ると、僕の服はあさられて、青年が財布から金を抜き出そうとしていた。
もう怒る気にもなれない。


インド人その5。僧侶
朝早起きをして、ガートで河を眺める。まだ気温もそれほど高くなく、とてもいい気分だ。
少し離れたところから声をかけられる。
河のほとりに茣蓙を敷いて、人々に説経を説いている僧侶だ。
なんとなく気分がよくて無視するのも居心地が悪く、言われるままに茣蓙の中に入る。
僧侶は、僕の額に赤いものをつけてくれ(インド人の額によくついているあれだ)、包みを渡して河に流すように僕に勧めた。その中にはココナッツや花などが入っているらしい。いくらか?と聞くといいから流してきなさいと言ってくれる。僕は従って流してきた。
戻ってくると、ノートを渡された。
そこに家族の名前を書きなさい。
僕は、家族の名前を思い出してローマ字で書く。
それから、ココナッツや花、さっき流したものを書きなさい。
夕方、あなたの家族のためにお祈りします。
言われたとおりに書く。
最後に、寄付金の額を書きなさい。
「。。。。。。
 なんで寄付金を払わなければならないの?」
「みんな払っています。
他のページを見て御覧なさい。
ほら、何千ルピーも払っているでしょ。みんなそれくらい払うのです。
私が夕方あなたの家族の幸せのためにお祈りします。」
「なんで金を払わなければならないの?」
「あなたはさっき、ココナッツを流したでしょう。あれはわたしが今朝市場を回って買ってきたんですよ。」
「金がかかるなんて言わなかったじゃないか。
なんで幸せになるために金を払わなきゃならないんだ。
僕が払うのは0ルピーだ!!
ほら、ここに書いたぞ、0ルピーって!!
警察でもなんでも呼んできやがれ!!絶対に1ルピーも払わねぇ!!」
あの僧侶はその後、ぼくの0ルピーに数字をいくつか書き足しただろうか。
きっとそうしただろう。そうしなければ、威力半減だものな。あのノートもケケケ


インド人その6。電車の中の青年
電車のなかで、僕は気分が悪かった。
毎日の下痢で今日もおなかが痛かったのだ。
ふと気づくと、僕のベットにインドの青年が登ってきた。
インドの電車はめちゃめちゃ混んでるのだ。
話したくもなかったので、おなかが痛くて調子悪いんだ、と告げ寝たふりをした。
すると、青年は心配してくれたようで、腹痛にいいマッサージがあると僕のおなかを押してくれた。
確かにそれはいくらか効果があるようだった。
うとうとしてふと気づくと、どうやらマッサージは終わったようだ。
青年が離れていこうとするところだった。
僕はまず腰に隠したセイフティバックの中を調べた。
案の定、僕の全財産はすっかり消えていた。

僕は焦ってなりふりかまわずその青年のポケットをまさぐった。
青年がのけぞった。
その手が、ベットと壁の間に差し込まれるのがちらと目に入る。
僕はそこに飛びついた。

僕の金がくしゃくしゃになって押し込まれていた。

金が戻ってきたことによる安堵と幸福に僕が包まれている一瞬の間に青年は姿を消していた。

冷静になると、怒りがこみ上げて来た。あいつをそのまま帰していいのか?
僕はそいつを探しに行った。
そいつは、車両と車両の連結部分の開いた扉の前にいた。
「おい。てめえ。てめぇはさっき何をしたんだ。てめぇは何したんだよ!!
金を返せ!!500ルピーだ。まだもってんだろ。ぜってぇゆるさねぇぞ。警察に連れて行ってやる。
さっさと金をだしやがれ!!」
今度は僕が金を脅して、そいつを精神的に苦しめてやる番だ。
暴力は僕の性分にあわない。徹底的に精神を痛めつけてやる。

「すべて渡した!!チェックしてくれ!!もう一度数えなおしてくれ!!もう俺は何も持っていない!!」
「嘘をつくな。500ルピーが亡くなった。金を返せ!!さあ!!さあ!!ぜってぇゆるさねぇからな!!」


青年は、その場から逃げた。
電車から飛び降りたのだ。



この町で、僕は毎日喧嘩ばかりしている。
彼らの心に罪悪感というものはあるのだろうか?
僕にはこれっぽっちもあるようには思われない。
そりゃそうだろう。
奴らの教えじゃあ、どんな罪を犯したってガンジス河で沐浴すればすべての罪が洗い流されちまうんだからな!!
すべては焼かれて、流されて、簡単に処理されるんだ!!







友達が勝手につけてくれました☆